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二次元コス女子大生、三次元男子に堕ちる
①いつもの妄想ひとりエッチ
8月の猛烈な暑さが落ち着き、涼しい風が吹くようになった秋の夜。
4年生大学の経営学部2年生である瑠愛(るあ)は、セミロングの黒髪をハーフアップにまとめ、実家の2階にある自室の机に広げたスケッチブックにペンを走らせていた。
やや小ぶりな顔立ちに整った形のちょこんとした鼻、
ファンデーションを塗らなくても白くなめらかな肌に映えるくりっとした丸い瞳で、瑠愛は白い紙を真剣に見つめる。
蛍光灯の白い光の下、シャーペンの芯が紙を擦る音だけが静かな部屋に響いている。

描いているのは、瑠愛の大好きなアニメ『魔法学院シャドウ』の二次創作マンガだ。
スケッチブックの中では、『魔法学院シャドウ』の主人公であり特異な魔力を秘めた見習い魔法士の少女・ユネが、いつもクールで冷徹、しかし誰よりも強い魔術を持つ魔法学院の教師・カイルに心を開く場面が繰り広げられている。
「ユネがここで顔を赤くして、カイル様は、ふっと視線を逸らす……」
瑠愛は小さくつぶやきながら、荘厳な魔法学院の教室で制服である魔術士の黒いローブを身に着けたキャラクターたちが会話するシーンを描き込んでいく。
教卓に頬杖をついたカイルが薄く笑う姿を思い浮かべると、胸がきゅんとしてくすぐったくなる。
「カイル様が現実にいたら、一体どんな人なんだろう」
無意識に漏れた声に、自分で苦笑する。
大学の授業と、両親と暮らす実家を行き来する瑠愛の日常生活に、カイルのような男性は存在しない。
冷たくも優雅で、どこか影のある雰囲気をまといながら、決して近づきすぎない距離で守ってくれる男性
――そんな理想は、2次元だからこそ成り立つのだ。
瑠愛がエリート魔法士を育てる魔法学校の光と闇を描いた『魔法学院シャドウ』という作品の熱心なファンになってから、もう2年が経つ。
特に、この作品の「カイル」という魔法学院の冷徹な教師のキャラクターに魅了されてから、瑠愛は現実世界においても、2次元世界のような完璧に整った容姿の男性を望むようになった。
しかし、そのような非現実的な見目麗しさのある男性は現実には存在しない。
そんなこともあり、瑠愛の男性経験は『魔法学院シャドウ』のファンになる前に少しだけ交際していた、大学の同じ学部に通う元恋人1人だけだった。
元恋人の男性とは、告白されて付き合ったものの、アニメやゲーム、マンガなどの趣味に興味のない彼とはどこか話が合わず、別れるきっかけの1つになった。
ふと、机上のカレンダーを見る。
「Aショッピングモールのコスプレイベントまで、あと1週間か。衣装の最終調整しなくちゃ」
瑠愛はシャーペンを動かす手を止めて、ベッドの下に隠すように置いている衣装ケースを取り出す。
中には、ユネの衣装である魔法学院の制服を再現した大きなフード付きの黒いミニスカートのローブやブーツが入っている。
奥のほうには、魔法杖などの小道具に加え、濃いピンクに赤を混ぜたような鮮やかなラズベリーピンク色が輝くツインテールに巻き髪のウィッグが入っている。
瑠愛は机からハサミやテープを出し、衣装の細かい部分を調整していく。
(イベントに行くのはこれで2回目。楽しみだなぁ)
ユネのコスプレ衣装を着てイベント会場に立つ自分の姿を想像するだけで、胸が踊る。
原作を再現しようとこだわった、スカートの裾のフリルと襟元にある六芒星を模した魔法学院の紋章を誇らしげになでる。
イベントで、この衣装の細部のこだわりに気づく参加者はいるだろうか。
そんな人がもしいたら、とても嬉しい。
しかし、無名のコスプレイヤーである瑠愛の衣装の細かな部分に注目する参加者はまずいないだろう。
(だけど、ユアの衣装を着てイベントに参加できるだけで、私はじゅうぶん。早く来週にならないかな)
ひと通り作業を終えると、壁のポスターに描かれたカイルのイラストを見やる。
真っ暗闇の窓の外からは秋の虫の声がかすかに届き、涼しい夜の静かな時間が流れていく。









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