SM小説|「セックスで濡れない女」の本性とは?【独身OL・M女】

SM小説|「セックスで濡れない女」の本性とは?【独身OL・M女】



セックスで濡れないM女の本性

①濡れない若美女の悲しい事情

1-1.20代M女の人にはいえない悩み

平日、お昼12時過ぎの✕✕会社の社員食堂は、今日もランチを食べる従業員たちで賑わっている。

「それでね~、今度、彼と温泉旅行行くことになって」

「え~っいいなぁ!この前付き合い始めたばっかりと思ってたら、ついに泊まりかぁ。泊まりならさ、次の日気にせず一晩中……♡みたいな展開もありそうじゃない!? ねえ、椎名さんもそう思わない?」

トマトパスタを口に運びながら、幸せそうな顔で彼氏の話をする同僚の鈴木さん。
彼女に羨望の眼差しを向ける、同じく同僚である川村さんが焼き魚定食をつつきながら、隣でオムライスを頬張る私に話しかける。

事務職員の女性グループでお昼時に繰り広げられるいつもの会話に、私はいつものように何となく参加していた。

 

「椎名さんは、最近どう? 好きな人とか、いる?」

 

「うーん、気になってる人はいるんだけど、中々うまくいきそうになくて……」

鈴木さんの質問に、いつものように嘘で塗り固めた返答をする。
この会社に新卒で入社してから、今年で25才を迎える今日までのシリア3年間。

 

ごく普通の事務職員として働いている私は、実は、キラキラ顔で恋バナをする彼女たちとは、まったく異なる悩みを抱えている。

 

セックスで、濡れない、感じない

 

肉体で、好きな人と快楽を得られない。愛し合えない。
それが、誰にも言えない私の悩みだ。

 

1-2.セックスの時に濡れない問題を解消するために試したこと

 

はじめてのセックス

 

普段のコミュニケーションは、問題なく普通にできる。
デートをして楽しい時間を過ごせる。

けれども、まともにセックスができないから、彼氏ができても続かない。
私の容姿は、決して悪いほうではない。

美容や食べ物には適度に気を使い、スレンダーな体型とそれなりの美肌をキープしている。

 

パーソナルカラーで言うとブルベ冬タイプのシャープ&クール系の顔に似合う、白・黒・青などのハッキリした色味の服やメイクを選んでいる。

ヘアスタイルは万人受けする黒髪ロングヘアで、決して悪い印象は与えない見た目を意識している。
なので、合コンや婚活パーティーに行けば、必ず何人かの男性に連絡先を聞かれる。

「付き合ってほしい」と、告白されることも度々ある。

けれども、最後には必ず、セックスができないことですれ違い、フラれてしまう。

純粋なSM出会いサイト

「どんなに好きでも、一生セックスなしは、無理」

それが、飲み会で出会い、半年付き合った同い年の元彼から最後に投げかけられた言葉だ。
処女を卒業したのは、19才の頃のこと。

 

初めての彼氏が相手だった。
そのときも最初から濡れず、痛い思いをしたが、「初めてだから仕方ない」と思っていた。

 

それから今まで、好きで付き合い始めた男性に、どんなに丁寧にキスや愛撫をしてもらっても、相変わらず濡れない。

 

愛情深く抱きしめられ、「凛子のことが本当に好きだ。愛してる」

などと囁かれながら、うなじや乳首に口づけられ、クリトリスやラビアを優しくほぐしてもらっても、私のアソコは砂漠のように乾いたまま、石のごとく固まって反応しない。

 

この事態をどうにかしようと、これまでに色々なことを試した。
が、どれもことごとく失敗に終わった。

 

ローションを使っても、感じないから痛い。
ローターやバイブなど、アダルトグッズを使ってみてもダメ。
互いに好き同士のはずなのに、なぜか私の身体だけが反応しない。

 

そんな私に、付き合った男性たちは徐々に疑問を抱き始め、気持ちが冷めてゆく。
そんな状態が続いている。

性的なことには、普通に興味がある。

 

映画やドラマの濡れ場を見ると、ドキドキして身体が疼く。
でも、自慰行為をしてみても、私は性感を得られない。

そんな私に愛想をつかし、何人もの男性たちが去って行った。

 

「彼とのセックスで初めてイッた」

 

「しょっちゅう求められて、困るぐらい♡」

 

友人や同僚からそんな話を聞くたび、まるで別世界の住人のように感じる。
私のこの症状をネットで調べると、「性的興奮障害」というものに当てはまっているような気もする。

だけど、このことで病院に行く決心がつかない。
婦人科健診は異常なし。だが、性的なことを相談する勇気は出なかった。

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代わりに、私は別の方面で勇気を出してみることにした。

そして先月、ついにそれを実行した。
それは、女性用風俗だ。

 

1-3.濡れない原因は相手のテクニック?プロに愛撫してもらえば濡れるのか?

 

性感マッサージを受ける女

いわゆるイケメン男性のセラピストに、全身を丁寧にアロマオイルでマッサージして感度を高めてもらってから、愛撫をしてもらうサービスである。
技術講習を受けて磨きをかけたテクニックによる、性感帯への愛撫だ。

私は、評判の良いランキング2位の男性セラピストを指名した。

 

──今日こそは、うまくいくはず。
みんなが味わっているような、めくるめく性の快楽を感じられるはず。
そう思い、期待してラブホテルへ向かった。

 

ランキング上位のセラピストのサービスは丁寧でレベルが高く、申し分ないものだった。
だが、それでも、私は濡れなかった。

 

多くの女性の口コミで星5つを獲得し、「超気持ちよかった」「初めてイケました♡」などとコメントを沢山書き込まれている人気のプロセラピストが相手でも、だめなのか。

私は落ち込み、うなだれて帰宅した。

高い金額を払ってサービスを受けたのに、それでもだめだった。
胸の奥にずっとつかえていた灰色のモヤモヤが、さらに大きくなり深く根を下ろしていく。

セラピストに笑顔で見送られラブホテルを後にしながら、虚しい気持ちでいっぱいだった。

 

1-4.普通にセックスがしたい

 

考え込む女性

 

先月のあの日のショックを、私はいまだに引きずっている。

 

「温泉旅行、ホントに楽しみだね~。感想、絶対聞かせてね!」

 

「えへへ♡はーい。川村さんも、新しい彼氏さんとうまくいくといいね♪」

 

「そうなの~今度ね、初めて彼の家に行くことになって~……」

 

──羨ましい。

 

同僚のノロケ話を聞くたび、そう思う。
私も普通にセックスがしたい。

彼氏を作って、デートや旅行へ行って、セックスをして、幸せを感じてみたい。

そんな思いをつのらせながら、昼休みの残り時間に、スマホのブックマークの画面をぼうっと眺めていたとき。
しばらく使っていなかったマッチングサイトが目についた。

私は久しぶりにサイトを開き、最後の望みで、ランダム検索の1番最初に表示された男性と、会うことにした。

 

それも、今夜。

 

マッチングしてから話がトントン拍子に進んだ結果だ。
待ち合わせ場所は、渋谷のホテル街の入口にあるコンビニの前。

 

おそらく、即ホテル直行だろう。
半ばヤケだった。

 

1-5.初対面の男性と即ホテル。そして・・

男性とホテルに入る女性

見知らぬ人と即ホテルだなんて、危険があるかもしれないのに。
でも、モヤモヤし続ける気持ちに突き動かされ、私は何かをせずにはいられなかった。

 

「こんばんは。あなたが、りんごさん? 目印のネイビーのワンピースに白いトートバッグ、髪型は真ん中分けの黒髪ポニーテール。合ってるよね? 僕、竜太郎です」

 

「はい、りんごです。初めまして」

 

目の前に現れた、りんごという私のニックネームを呼ぶ竜太郎という38才の男性は、黒いスーツを着こなした、少し短めの黒髪が爽やかなビジネスマンだった。
清潔感と最低限の常識は持ち合わせていそうな雰囲気に、私は少しホッとする。

 

ホテル街の入口で待ち合わせた男女が向かう場所は、ただ1つ。
軽く雑談しながら歩き、1番近くの空きのあるラブホテルに入り、部屋を選ぶ。

 

 

「りんごさんは、どの部屋がいい?」

 

 

「何でもいいですよ」

 

 

「じゃあ、このSMルームにしようか」

 

 

「何ですか、それ。よくわからないけど、いいですよ」

 

 

受付を済ませ、エレベーターで部屋に向かう。
そういえば、竜太郎のプロフィールには『SM好き』と書いてあった。

1番に表示された人なら誰でもいいと思って決めたが、SMについて詳しくは全然わからない。
けど、まあいいか。

女性用風俗のプロのセラピストの愛撫でも感じなかったんだから、私の身体はもう、何をしてもムダなんだ。
だったら、どんな部屋でも、どんなプレイでもいい。

そんな気持ちで、私はSMルームに足を踏み入れた。

 

 

②初めてのSMルーム

SMルーム

2-1.告白

 

初めて入ったラブホテルのSMルームは、壁や床が黒と赤で統一された、妖艶な雰囲気のある部屋だった。

しかも、室内の至るところに、どう使うのかよくわからない、なんだか物々しい黒い革の器具や大きな設備まである。

一般的なラブホのシンプルな部屋とは一風変わった雰囲気に、慣れない居心地の悪さを感じる。

 

「大丈夫?」

 

無言で立ち尽くし室内を見渡す私に、竜太郎が声をかける。

 

「あ……大丈夫なんですけど、こういう部屋は初めて来たから、ちょっとびっくりして」

 

「ああ、そうか。まあ、変わってるよね。でも、お風呂とか洗面所は普通だよ。とりあえず、座ってお茶でも飲もうか」

 

真っ赤なソファに座り、竜太郎が備え付けのポットで入れてくれた紅茶を飲む。
マッチングサイトで即会いだったが、それなりに気がきいて、話も通じそうな男性でよかったと思う。

 

「……」

 

温かい紅茶を飲んでほっとする感じと、自分が身を置いている部屋の異様な非日常の雰囲気のギャップが激しくて、なんだか頭が混乱しそうになる。
私は混乱しかけた頭のまま、竜太郎の案内でバスルームに向かい、シャワーを浴びる。

 

白いレースの下着を身につけた後、元々着ていた服とバスローブ、どちらを着ようか迷った挙げ句、ネイビーのタイトワンピースを元通り着て戻った。
続いて、竜太郎はジャケットとネクタイは脱ぎ、ストライプの白いワイシャツとスラックス姿でシャワーから戻る。

 

竜太郎は決してイケメンというわけではないが、スマートな立ちふるまいとたまに香る清潔感のある匂いにドキっとさせられる。
仕事ができそうで、それなりにモテそうな男性だ。

 

半ばヤケの勢いで即ホテルに来たが、おかしな男性でなくて本当によかった──

安堵した私は、ソファに座ったまま、竜太郎からの口づけを受け入れた。
徐々に舌を絡ませながらキスをし、肩を抱かれベッドに向かう。

 

ベッドに寝転ぶ私を竜太郎は上から抱きしめ、ワンピース越しに胸に触れる。
胸元のボタンを開けられ、ブラジャーの中に差し込まれた男の手が、私の乳首をそっと転がす。

 

やがて、もう片方の手が太ももの奥に滑り込み、下着の上から局部の真ん中をなぞる。

その手が、ショーツの中に潜り込み、秘部の中心に触れる。

 

「……」

 

キスの時点から胸は高鳴っているし、気分も盛り上がっている。
さらに竜太郎は、女の身体への触れ方が下手なほうではない。

 

むしろ、上手いほうだと思う。
けれども、これまで通り、私の身体は反応せず、膣は潤うことがない。砂漠のままだ。

 

「実は、私、濡れないんです」

 

不信がられる前に、自分からそう告げた。

 

「そうなの? 全然、濡れないの?」

 

「はい、まったく濡れないんです」

 

「何をしても、だめなの?」

 

「はい、何をしてもだめなんです。ここまで来ておいて、申し訳ないんですけど……」

 

竜太郎は一瞬考え込んだ後、あるものを指差しながら言った。

 

「じゃあ、あれは?」

 

それは、アルファベットの”X”の形をした、壁際に設置された大きなオブジェのような黒い椅子だった。

 

2-2.初めてみるX型のSMチェア

X型の椅子

 

「あれって、何なんです?」

 

「X型のSMチェアだよ。あそこに女体を座らせて磔みたいにさせて、動けないようにする」

 

「え……どういうことなんですか? 全然わからないし、そんなの、やったことないです」

 

変わった形の椅子だと思ったけど、違うのだろうか。

 

「じゃあ、やってみよう」

 

「え、と……ちょっと怖いし、ああいうのが良いなんて、私は別にSM好きでもないし、絶対ありえないと思います」

 

「やったことがないなら、わからないじゃない。何事も実際に挑戦してみないと、わからないよ」

 

「うーん、でも……」

 

「嫌だったらすぐやめればいい。嫌がるのに、無理やりはしないよ」

 

「うーん……」

 

X型のSMチェアに近づき、近くで見てみる。

 

よく見ると、椅子の上にそびえるX型の上部には鎖つなぎの手枷、足元には足枷がついている。

 

「手と足を、ここに拘束するんですか?」

 

中央が空洞になっている変わった形の椅子に腰掛けてみる。

 

「そう。こんなふうに」

 

 

試しに手枷に入れてみた私の右手首に、竜太郎が黒いベルトを巻き付け、

カチャリ。

 

彼が留め具をとめた瞬間、私の中で、たるんでいた糸がピンッと張り詰めるような感覚がした。

 

2-3.拘束

カチャカチャ、カチャリ。
左手の手首も同様に、お手上げのポーズをしたまま、上の方で固定された。

「無理そうだったらすぐ外すから、言ってね」

 

カチャリ、カチャリ。
両足にも、鎖つなぎのベルトが巻かれてゆく。
両手と両足、全ての留め具が留まると、ピンと張り詰めた糸が、グンッと何か大きな力に引っ張られる感覚がした。

 

「っ……」

 

──なんだろう、この感じは。

 

初めてのことによくわからないままでいると、お手上げポーズで無防備になった私のワンピースの胸元を、竜太郎の手がはだけさせる。

 

「!」

 

露わになった白レースのブラジャーのカップを下にずり下げると、ワンピースを着たままにも関わらず、乳房のみをさらけ出した状態になる。

 

「え、っそんな」

 

すぐに、反対側の胸も同じように剥き出される。

私は両手万歳の姿勢で動けないまま、両乳房を丸出しにされてしまった。

 

「胸、こうして下着をはだけると、けっこう大きいね。鮮やかなピンク色の乳首が丸見えだよ」

 

「、恥ずかしい……」

 

もう少しで頭がパニックになりそうなほどの羞恥心に襲われ、絞り出すかのような小声で何とかつぶやいた。

 

だが、そんな小さなかすれ声は、男の次の行動にかき消される。

 

2-3.乗馬鞭を使ったSM

SM 鞭

 

「!!」

 

膝丈のタイトスカートを太ももまで捲り上げられると、ショーツを足首まで脱がされた。
局部までは見えていないものの、下着を取り払われた下半身を冷えた空気がなぞり、違和感がすごい。

 

「……」

そんな私のはしたない姿を、竜太郎がじいっと見ている。

 

恥ずかしくてたまらなく、しかも、初対面の男の視線から逃れられない。

 

耐えがたいほどの羞恥心と妙な焦りに、背中や脇が汗ばんでいく。

 

「りんごちゃんは、すらりとした手足にくびれた腰がとても綺麗だよね。でも、それ以上に今は、その身体がいやらしくなってるよ」

 

「いや、そんなこと、言わないで」

 

竜太郎の言葉がぐるぐると頭の中を回る。
室内でも薄着でいたら寒いほどの10月の冷える夜なのに、暑い。

 

寒がりなのに、こんな薄着で拘束されて、暑くて暑くてたまらない。
しばらくすると、竜太郎は私を置いてその場を離れ、X椅子の後ろのスペースへ消えていった。

 

「え、ま、待って」

 

竜太郎が後ろのほうで何をしているのかわからず、身動きが取れないこともあり、不安がつのる。
乳房を露わにし、下半身に何も身に着けないまま怪しい椅子の上で動けない状態はあまりに異様で、心拍数が上がる。

 

胸元を見ると、剥き出た乳首が立ち上がっていた。
秋の夜長の冷えのせいだろうか。

 

だが、相変わらず、真夏に冷房のない部屋にいるかのように暑くてたまらない。
3分ほど放置された後、やっと竜太郎が後ろのスペースから戻った。

 

彼は、黒く細長い棒を手にしている。

 

「え、それは、何」

 

「乗馬鞭だよ。この部屋に備え付けのものだ」

 

「何、それ……ひっ、!」

 

竜太郎が乗馬鞭と呼んだ細長い棒の平らになった先端部分で、固定された私の二の腕や太ももをそっとなぞると、私はおかしな声をあげた。

特に、素肌を晒している太ももは、単なるステッキのようなものを滑らせているだけなのに、くすぐったいような熱さに痺れる感覚が走る。

 

触れられただけなのに、反動で変な声を出してしまうほど、身体が過敏になっている。

──ペシン。

 

乗馬鞭の先端部で、剥き出しの乳房を軽くはたかれたそのとき。

 

「んあっ!!」

 

びくん、と身体が跳ねるほどの熱い衝撃が、乳首から全身に走った。

 

③拘束台の快楽

3-1.乳房を鞭調教

拘束プレイ

ネイビーのタイトワンピースの胸元から乳房をはだけ、太ももまで捲ったスカートの下ではショーツすらも取り払われた私とは対照的に、一糸乱れぬワイシャツとスラックス姿の竜太郎は眉一つ動かさず、鞭打たれた私を見下ろしている。

「乗馬鞭って、何なんです、この道具……ああっ!」

──パシッ、パシン!

再び乳房を打たれると、身体が勝手に跳ね、ジャラジャラと手枷が音を立てる。

──スッ、スルッ……

「、ンっ、!」

素肌が露わになっている首筋や、太ももの外側から内側を竜太郎の操る乗馬鞭がなぞるように滑っていく。
ゾクゾクするようなくすぐったさが素肌に走り、いちいち勝手に声が出てしまう。
恥ずかしいのに、背中や腰がひくついてしまう。

──パシッ、パシッ!

「っんうっ!」

乳房の鞭打ちと、鞭で素肌をなぞる動きを交互に繰り返され、私は、頭が沸騰するような感覚になった。
頭が沸騰するなんて、平凡な会社員生活を送る私の毎日では考えられないことだ。

竜太郎がなぜこんなことをするのか、全くわからない。

まるで、生きている人間ではなく、自分の乳房を血の通っていない物のように扱われている。
それなのに、怒りとは違う別の感情で、頭が沸騰寸前になっている。

──パシンッ、パシンッ!

「、っっ!」

乳房を虐げる鞭が乳首をかすめると、閃光のような熱が迸った。

「っ……」

乳首がジンジンと熱い。
これが、性感というものなのだろうか。
温かい人間の手ではなく、冷たく無機質な乗馬鞭とかいう聞き慣れない道具で打たれて初めて、気持ちいいと感じるなんて。

何がなんだかわからずぼうっとする私は、乳房の先端に再び走った熱感に声を上げた。

「ひあっ!」

男の手が、無防備な左右の乳首をぎりぎりと締め上げている。
これまで、元彼や女風セラピストから受けてきた優しい愛撫とは正反対の、鎖繋ぎの状態で乱雑に乳首をひねられて初めて、私は快楽の声を上げたのだ。

3-2.ギロチン台

拘束台

「っいや」

初めての快楽がなんだか得体の知れないものに思え、不安になった私は、乳首を弄び続ける男の手から逃れようと、X型に吊られた両手を荒く動かす。
しかし、ガチャガチャと鎖が音を立てるだけで、意味のない抵抗だった。

「乳首、そんなに感じるんだ」

沸騰寸前の私の頭上で、余裕たっぷりといった様子で竜太郎が言う。

「ちょっと虐めただけなのに、乳首、完全に立っちゃってるよ」

「……そんなこと、ない」

「まあ、いくら否定したって、今のりんごちゃんはこんな変態的なSM椅子に両腕バンザイで固定されて、丸出しの乳房まで触られ放題されても逃げることすらできないんだから、口だけで否定したって全然意味はないよね」

「んあっっ」

私が何かを言う間もなく再び乳房の先をひねられ、情けない声だけが出た。
胸元に目を落とすと、薄桃色の乳輪部分がぷっくり膨れ、見たことのないほど太くなった乳頭が隆起していた。

カチャ、カチャ。

突然、手足の拘束ベルトが外された。

「はぁ、はぁ……」

私はだらんと両腕を下げ、肩で息をするのが精一杯だった。

「次は、あれを試してみようか」

相変わらず呼吸に乱れ一つもない飄々とした竜太郎の視線の先にあるのは、私の背丈より少し低い大きさをした、3つの丸い穴が横並びに空いた黒い板のような器具だった。
なぜか、中心の穴が1番大きく作られている。

「あれって……」

「ギロチン台だよ」

わずかに笑みながら普通に答える竜太郎の言っている意味がわからない。

「え、と、ギロチン台って、中世の処刑で使われた、あのギロチン……?」

「そうだよ。ああ、もちろん、ここにあるギロチン台は処刑に使うためのものじゃないよ。拘束のためだよ」

「えっと……?」

「まあ、使ってみればわかるよ。ほら、この穴に頭と手を入れて」

竜太郎が台からぶら下がる鎖を引くと、ギロチン板の上部が半分に割れて持ち上がった。
こんな物騒な名前の台に頭と手を入れて、何が起きるのか全くわからない。

それなのに、嫌、もう帰る──そうはならない自分に自分で驚く。
竜太郎に言われるまま、流れるまま、まだ頭の奥が熱いままの私は、腰をかがめて、黒い板の穴に沿うように頭と両手を置いた。

すると、

──ガコン。

ギロチンの上部が下ろされた。
私は立ったまま板に首と手首を挟まれ、まさにこれから処刑を待つ罪人と同じ格好で動けなくなった。

板はクッション性のある素材で、特に苦しくはない。
だが、こんな不自然な格好、しかも教科書や映画で見たような罪人と同じ姿で固定されていることにものすごい違和感がある。

変わった形のインテリアだと思っていたが、こんなふうに使うなんて考えもしなかった。

「さて。人生初のSMチェアに拘束されて、乗馬鞭で打たれて、りんごちゃんのアソコは今、どんなふうになっているかな」

「あ、っ」

あっという間にスカートを捲くられ、ショーツを脱がされる。

3-3.羞恥プレイ

「そんな、やめてっ」

SMルームのこんな台に拘束されておきながら、経験の少ない私は何をされるのか予想ができない。
まさか、いきなり下着を脱がされるなんて。

そう憤りジタバタしても、ギロチン板に頭と手を挟まれた状態では何の抗力もなく無抵抗に等しい。
板の向こうで竜太郎が何を持ち何をしようとしているかも、何もわからない。

「えーと、りんごちゃんって、濡れないんじゃなかったっけ。何、これ、このアソコ。拘束されて鞭打たれて、ヌルヌルの液漏らしてドロドロになってるいやらしいオマ✕コが丸見えだよ」

足元のほうから彼の声が聞こえた。
濡れてるなんて、そんなわけない。

25才の今まで、優しい元恋人やプロの女風セラピストにどんなに丁寧に触られたって、濡れなかったのだから。
おかしな格好で拘束され、露わになった下半身を覗き込まれていると思うと、みっともない恥ずかしさでいっぱいになる。

「やめて、見ないで」

経験が少ないからって、こういう状況になればこんな恥辱を味わうことになるだろうことすら予測できなかった自分の頭の悪さを恨む。
だが、いくら自分を恨んでも、竜太郎の行為は止まらない。

「全部、じっくり見てあげるから」

「、あっっ」

彼の手が、ぱっくりと秘部の肉を左右に割る。

ぬちょ──

そんな音が聞こえてきそうなほど、大事な部分にねばつく感覚がある。

「あーあ。りんごちゃんのアソコ、奥のほうはもちろん、外側のヒダまでいやらしい液が滴るほど濡れちゃってるよ」

「そんなわけない、今まで濡れたことないんだから。もうやめて」

「いや、今はもう、外のほうまで液が漏れてきちゃってて、毛のほうまでびっしょり張り付いてるくらいだよ。興奮してヒダもぷっくり大きくなってる」

──ヌルリ。

男の指が秘部をなぞると、

「はうっ」

今までにない、熱く何かが下半身で弾ける感触が走り、私は背を震わせた。

「ほら。ちゃんと、見てみなよ」

私の前に差し出された彼の中指は、甘酸っぱい匂いのドロドロの粘液にまみれていた。
これが、私の中から漏れた体液だというのか。

「今だって、少し触っただけで明らかに感じてたし、さっきだって貴女、あんな変態SMチェアで散々よがってたし」

「違う、こんなことで濡れるなんて、あるわけない」

「そう? でも、ほら」

「あううっ」

再びギロチン板の後ろに回った竜太郎の指が入口を探るように動き、下半身に火が散る。
敏感部を指が這うネトネトした水っぽくねばつく感覚が、自分の性器が濡れていることを否応なしに実感させる。

これが、”濡れる”ってことだったのか。
もう、言われなくてもわかる。

熱せられたバターのように、アソコがドロドロに溶けている。
25年間濡れたことがなかったのに、なんで、こんな、SMルームとかいう訳のわからない部屋でギロチン拘束されて、しかも初対面の男に。

もう、何がなんだか、自分が何なのかも、何もわからない。
ただただ、こんな異様なギロチン台で恥部を触られて、淫らな声を上げている自分がいる。

④秘められていた性癖

4-1.マゾとしての自覚

「っそこは、だめ、っああっ……!」
クチュリ、グチュリ。

膣壁のぬかるみをかき分け、男の指が内部をかき回し始めた。

「いやっもうやめてっ」

初めての快楽がなんだか得体が知れず怖くなり、私は逃げようと身体をよじる。

「嫌なら、やめる?」

竜太郎の声が上から降り注ぐ。
ここでやめたら、どうなるのだろう。

ずっと、濡れないことがコンプレックスだった。
だけど、今日初めて、濡れるということを知った。

やめたくはない。
知らなかった世界をもっと見てみたい。

でも、怖い。
なぜ、自分がSMルームでこんなに濡れているのかわからないし、未知の行為が恐ろしい気持ちもある。

「りんごちゃんは真正のM女なんだから、ここまできたら逃げずに、自分の性癖と向き合ってみようよ」

彼の言葉に頷きたくない自分と、頷きたい自分、両方の自分がぶつかり合い、もうどうすればいいのかわからない。
困惑する私の前に、ある物が差し出された。

「これを、どうしたい?」

それは、硬く立ち上がった男のペニスだった。

「っ……」

ガッシリと上向き、根本から亀頭までみっちりと膨らんだ男根を前に、私は言葉を失った。

「好きなようにしてみなよ。男のガチガチに勃起したチ✕コを、貴女は今、どうしたい。自分の本心に忠実に従うんだ」

こんな、恥辱に満ちた姿で拘束された状態で男のものを間近で見たことなど、今までない。

こんなにも異常な状況なのに、目の前のペニスを見た瞬間、淫らな液を吐き出す下半身が、ずくん、と疼いた。

竜太郎の下半身から雄々しく立ち上がったそれは、揺るぎない硬さの胴体がたくましい。
が、それよりも目を引くのが、先端部だ。

鮮やかな肉色の亀頭が、胴体よりも横に大きく広がって膨れている。
元恋人のものは、根本から先端まで直筒のように均等な太さで真っ直ぐの形をしていた。

こんなに大きな亀頭は見たことがない。
──このペニスに、触れたい。

触れたくて、仕方がない。
私はそんな欲望に飲み込まれかけていた。

いつものように事務仕事を終え、マッチングサイトで竜太郎と出会いSMルームに足を踏み入れてから今まで、自分自身に驚くことの連続だ。

「どうせ濡れないから」と卑屈になっていたこれまでの自分から、明らかに何かが変わってきている。

私は今、目の前のペニスに触りたくて仕方がない。
目と鼻のすぐ先にある、この、ムチムチと硬く熱い肉の感触に、どうしても触れたい。

が、肝心の両手はギロチン板に挟まれていて使えない。

「、……っ」

深いボルドー色のリップを塗った唇を開き、私は舌を差し出した。

4-2.フェラチオ調教

「っ、……」

舌をめいっぱい伸ばしても、あと少しのところで、目の前の欲するものに届かない。

ポトリ。

舌先から、透明な一筋の唾液が落ちた。
拘束されたはしたない格好で涎を垂らすという、よりはしたない行為をしている。
が、最後の砦のためらいや抵抗感はなくなりかけている。

エサを求める野生動物のようになった私を仁王立ちのまま見下ろしていた竜太郎が、わずかに一歩、前へ出た。

「ふ、っっ」

舌先に触れた、ぬろり、とした感触。
私は必死になって亀頭の肉の張り出しを舌で舐め、幹に唇を這わせる。

手も足も使えないから、舌と唇で一生懸命ペニスに触れる。
真っ直ぐに上向き、どっしり構えた硬い肉幹に何度も舌を這わせる。

すると、静観していた竜太郎が動いたと思うと、巨大な陰茎の先端から根本近くまでが、口内いっぱいに入り込んだ。

「んんっ!?」

目を見開いて驚く私にかまわず、彼は、口内の太幹を出し入れする。
私の意思などまったく関係なく、ジュポジュポと口の中で太い幹が暴れるように動き続ける。

「んむっ、んぐうっ!」

女の小さい口で、縦横無尽に出し入れされるペニスを受け止める無理のある行為に翻弄される。
膨張した幹はもちろん、大きく広がった亀頭が喉奥付近に当たると、苦しさに涙がにじむ。

口腔から鼻腔まで、雄の汗と体液の混じった生々しい匂いで充満する。

「んぐっーー!」
ギロチン台に両手と首を挟まれた不自然な格好でのフェラチオに加えて、ジュブジュブと否応なく動くペニスに、水中にいるわけでもないのに溺れそうになる。
今まで経験してきた、頭を撫でられながらの愛に溢れたフェラチオとは次元が違う。

男性器を口で慰めるのは同じでも、まったく別の行為だった。

「りんごちゃんの口の中、思ったより気持ちいいな」

がぼっ──!

「んーーーーっ!」

太幹が、喉の奥のほうに押し込まれたまま動きを止めた。

『嫌だったら言って』と竜太郎は事前に言っていたが、声も出せず手足も使えないこの状態で、自分の意思を伝えることは不可能だった。

ジュボッ、ジュボッ──

再び、ペニスが動き始めた。

フェラチオ調教サイト

4-3.喉奥の快感

私は、喉奥に突き立てられるペニスを受け入れる、感情のない器のようだった。
口唇を何度も滑るペニスの表面の肉に柔らかみはあるが、直立する芯は恐ろしく硬い。
人間の身体の一部分が、まるで骨の芯が入っているのではと思うほど硬くなることが不思議で仕方がない。

男という生き物の雄々しさに、柔肉から蜜液を垂らすだけの弱々しい女は、捕らえられてひれ伏すしかない。
セックスにおいて、無力な女は男の剛直の下に跪き、ぽっかり空いた穴を差し出すしかないのだ。

「かはっ、んむうっっ」

延々と続く口淫の苦しさに目の前がぼうっとしかけた頃。
唇と喉を伝いドロドロと大量に流れ出る唾液が、気持ちいい。
そんな状態が訪れていた。

ろくに息もできず、口の中と喉がこれ以上ないほど苦しいのに、がぼがぼ抜き差しされるほど溢れる唾液に恍惚としていく。
亀頭の先端から染み出た苦い液体の味が、口内いっぱいに広がる。

こんなに口の中が苦しいほどパンパンに勃起させ、亀頭から体液を漏らすほどこの男が感じているんだと思うと、悦びと興奮が湧き上がってくる。
こんな、身体の奥底から赤黒い炎がメラメラと湧いてくるような興奮は、これまでの優しく愛情深いセックスには一切なかった。

がぽっ──

ペニスが口から出ていくと、

──バシッ!

「あんんっ!」

スカートを捲くり、ショーツを奪われて無防備なまま晒されていた臀部への鞭打ちが再開した。
唾液まみれの私は透明な糸が口から垂れるのも気にせず、はしたない声を上げた。

フェラチオの苦しさでいっときは忘れていた乗馬鞭の痛みが、鮮やかな電流となり全身を駆け巡る。

バチン! バチンッ!

「ひあっ……!」

口内を犯すような激しい口淫で火照った身体を罰するように打たれるたび、全身に火炎が吹きすさび、ドロリと蜜が滴る感覚がする。
やめてだとか、嫌だとか、恥ずかしさをごまかすための言葉すらもう出てこない。

涙と唾液に汚れ、尻や乳房を晒したままギロチン台に拘束された今の私は、今までの品行方正な事務員女子とはまったく別人の、男の手に翻弄される、恥辱的でみっともないだけの存在だった。

「ひ、っ!」

腰を突き出したまま熱い痛みに酔いしれる私の局部に、あるものを突きつけられ、私は一気に我へと返った。
ギロチン板の向こう側の、捲くったスカートから覗く秘部に押し当てられた、硬い感触。

「あ、それ、は」

全部言い終わる前に、その熱い塊はヌチュリ、と、秘唇を割って入ってきた。
蜜液でぬかるみ、性的な昂りで厚さを増したヒダに先端部分がゆっくりとめり込んだ、その直後。

──ズヌンッ……!!

「ああッ……!?」

太く長いペニスが奥深くまで一気に到達し、私はギロチン台に囚われた身体を限界まで反らせた。
突然、膣奥を味わわんとばかりに奥部にとどまった剛直の衝撃に訳がわからず、呆然としていると、私の腰を掴み、男が動き始めた。

⑤被虐に悦ぶマゾ

ギロチンセックス

5-1.ギロチン台に囚われて

「ひ、っ」

膣奥を突き上げ、しばらく奥部に留まっていたペニスが、ぐっしょり溶けたぬかるみから引き抜けていく。

かと思いきや、

──ズシンッ……!!

「ああぁあッ……!!?」

幹の部分よりも巨大な亀頭が再び、ぬめった膣肉をかき分けて入口を進み、力強く奥を打つ。
ギロチン台に頭と両手をがっちりと囚われている私は、抗うことはできない。

今まで感じたことがなかったペニスの快楽に溺れ、この状況に異議を唱えることもできず、淫らな声を発し続けている。
昼休みの社員食堂で同僚のノロケ話を聞き、地味な制服姿で単調な事務業務をしていた昼間のことが、まるで異世界に感じる。

「あぁああッ、いぃいいッッ!」

キノコのようにくびれて張り出した大きな亀頭から、太い幹の根本までズブンッズブンッと立て続けに抜き差しされる。
男のペニスを胎内に入れ込まれるセックスは、こんなに激しい快楽をもたらすのかーー。

そのことをギロチン台に囚われ犯されて初めて知った私は、まるで赤ん坊のように、あ行の音しか発せなくなっている。

「いああぁあッッ」

今の私は、幼子だった乳児期から成人になり、大人の社会の中で当たり前のようにすました顔で毎日働いている普段の自分から、生物として明らかに後退している。
それなのに、こうして退化し、手足が不自由な赤子となって感じるままに鳴き叫び、初対面の男の前で無様な姿を晒していることにまで、なぜか快楽を感じている。

「あうううーーッ!!」

いやだとか、もう無理とか、こんなに気持ちいいの初めてとか、気持ちよくて子宮が壊れそうとか、もっとしてとか、言いたいことが洪水のように湧き出てくるのに、そのどれもが言葉にならず、全部、快楽のはしたないあえぎ声となって赤黒いSMルームに響き渡る。

「ああっそこ、奥、すごいぃっあぁううっっ」

額や脇には、今まで出たことのないような妙にベトついた汗が滲んでいる。
フェラチオで唾液にまみれた口元には顔周りの髪が張り付き、後ろでひとつにくくった黒髪はほどけかけている。

ブラウン系アイシャドウにパープルのラメを散りばめたブルベ冬に合う華やか系メイクも、快楽の涙でぐしゃぐしゃに崩れているだろう。

『今から入れるよ、大丈夫? 痛くない?』と、元恋人が指で丁寧にほぐしてから、ゆっくり挿入してくれていたこれまでのセックスとは雲泥の差だ。

ギロチン板の向こう側で私の腰を掴み揺さぶり続ける竜太郎の様子は、何もわからない。
乱れた私の姿を見て、みっともないとほくそ笑んでいるのか。

それとも、彼も私と同じく、快楽に息を荒げているのだろうか。

5-2.ご褒美

「ああっ……ああんんんーーっっ」

ギロチン台で繰り広げられる卑猥な行為は、両手を絡ませ、互いの顔を見つめ合い、愛のある口づけを交わしながらする、これまでの性行為とあまりにも違う。
人間の生殖行為とは何なのだろう。

こんな、かつては処刑に使われていた台の上で、愛情とは逸脱した淫猥な行為で快楽を得るなんて、頭のどこかがバグっているとしか思えない。
SMで、愛を確かめ合う人々もいるのだろうか。

でも、少なくとも今の私は、愛のかけらもないと感じる行為で快楽を得ている。
恋い慕う心がなくても、女の身体は嬲られることで快感を得ると知ってしまった。

それとも、竜太郎のこの行為には愛情が含まれているのだろうか。
わからない。

もう、何もかもが、まったくわからない。

「ひ、っ」

突然、ズルリという感触とともに、下半身のぬかるみからペニスが引き抜かれた。
その直後、竜太郎がギロチン板の後ろから前のほうへ来たと思うと、

「んむうっーー!」

変わらず硬さを保って直立し、私の蜜液がヌラヌラとまとわりついた剛直を、快楽でだらしなく半開きになった口内に押し込んだ。

「っっ!?」

いきなり口腔に入り込んできたペニスと、急に突きつけられた自分自身の淫らな体液の独特な匂いと味に混乱する。

「ンンンーーっ」

ついさっきまで膣奥に入っていた、自分の体液まみれのものを咥えさせられるのはかなりの抵抗感がある。
いやいやと首を振り、ペニスを吐き出そうとする。

すると、不意に肉棒が口からはみ出た。
私はそのまま口を固く閉じて抵抗する。

しかし、そんな私の頭を押さえつけ、竜太郎が非情に言う。

「口、開けて」

や、と言いかけて口が開いた瞬間、すかさずペニスを再び口内へ押し込まれる。
自分の膣から染み出た体液なんて、口に入れたくない。

が、ギロチン拘束されている私は、体液まみれのペニスを口腔で受け入れるしかないのだ。

「ンンっ……ンンンーーっっ」

ジュボジュボと耳障りな濁音を放ちながら口内を硬肉でまさぐられるうち、頭がぼうっとしてくる。
ドロドロと多量の唾液を流し、口腔粘膜を蜜液まみれの肉棒が刺激するたび、熱感が身体中に広がっていく。

まるで、口の中の粘膜が、膣肉と同じ性器になったかのようだ。

私の口は、アソコになってしまったのか。
私の口はアソコ、私の口はアソコ、私の口はアソコ……

「じゅぶッじゅぶじゅぶッンむううッッ」

私という女は、なんて恥ずかしく淫らな存在なんだろう。
こんな恥ずかしい女は、こうして口腔までも男に犯されて当然なのだ。

犯され、凌辱される罰のような行為に、褒美を与えられたように悦んでしまうのだから、虐げられても仕方がないのだ。

「がぼっ……げほっ」

「りんごちゃんは、明らかにM女だよ」

剛直を抜き、息苦しさに喘ぐ私を横目に竜太郎が相変わらずひょうひょうとした様子で言う。

「なに、それ、M女って……かはっ、わ、私が、そんなわけない」

「今までの男たちは一体、りんごちゃんのどこを見てたのかな? ほら、りんごちゃんの身体は、お尻を叩いて、ギロチン台で乳首をつままれて、こんなふうに反応する」

臀部を平手打ちされ、前かがみで晒され続ける乳房を弄ばれ、私はまた淫らに啼く。

5-3.露わになるM性癖

「ああっいやあっ恥ずかしい、やめてっ」

「恥ずかしい、何か怖い、そんな状態でいたぶられるようにされるのが快楽。それが、貴女の性癖ってことだよ」

ズヌンッ──!!

「ッッ!!?」

ギロチン板の向こう側に晒された秘部を再び、何の事前通告もなく肉棒で貫かれる。
その衝撃に私は声も出せず、あ然として手足を震わせるしかなかった。

最初に挿入された時からぬかるみ、ゆるんだ膣肉は、再び押し入ってきたペニスをやすやすと飲み込む。

ヌプンッヌプンッ!

ズプッズプッ、ズプンッ……!!

「あんんンンッッ! もういやあッここから離してっ……ふっんふああああッッ!!」

ギロチン台に首を差し出した格好のまま動けない私が、男のピストンを止める術はない。
男がペニスを抜き差しする動きに合わせて腰を震わせ、乳房がゆさゆさと揺れる。

「ひんっ……もう、もうっっアソコがっ変になっちゃうッッ」

永遠に終わらないギロチン挿入に、私は身体中から涎を垂らすしかできなかった。

「どこからどう見ても、貴女は、被虐に悦ぶマゾだ」

竜太郎の声が、まるで天から響くように降りそそぐ。
私は、M性癖だったのか。認めざるを得ない。

何が、濡れなくてセックスできない、だ。
どこが、性的興奮障害だ。

今の私は、全身が燃え上がりそうなほど性的に興奮し、淫らな汁を垂れ流しながら、膨らんだヒダで雄のペニスをずっぷり飲み込んでいる。

まだ、互いの本名や仕事や趣味すらも知らず、わかっていることはマッチングサイトのプロフィールに書いてあった年齢と好きな食べ物くらいしか知らない、ほぼ他人の状態だというのに。

セックスは、お互いのことを深く知って、付き合って恋人になって、愛し合ってするものだと思っていた。
それなのに、初対面でのSMセックスで初めて私は性器を濡らし、涎が垂れるほどの快感を知ってしまったのだ。

⑥本当の欲望

6-1.ドMの真実

M女の欲望

これまで私は、いわゆる一般的な家庭で育ち、普通の学生生活を送り、就職した会社で当たり前のように普通の社会人として暮らしてきた。
セックスができない問題は抱えているけれども、自分はごく普通の人間で、特殊な部分など何もない。

これからも、今までどおり普通の人として平坦な毎日を過ごしていくのだ。
そう思っていた。

にも関わらず、SMルームのギロチン台で鞭打たれ、恋人でもない男との犯されるようなセックスで初めて、快感を得てしまった。
こんな事実は、自分は普通だと信じ切っていた頭では想像もしなかった。

SMは、平凡な自分とはまったく違う、どこか遠くの世界の特殊な人たちがするものとしか思っていなかったのに。

「あああんっ……おかしくなるううっ」

前かがみの姿勢でギロチン板に頭と手を挟まれて動けないまま、腰を掴まれ激しくペニスを打ち込まれ、私は唾を飛ばしながら叫ぶ。
気持ちよくて、おかしくなる。

今までの平坦な毎日では、無我夢中でこんな言葉を発したことなどもちろんない。
平凡だと思い込んでいた今までの人生は何だったのだろう。

そんな思いまで頭をよぎる。

「あううんっっオチンチンが、ずうっと止まらないいっっあああッッ!!」

ギロチン台をガタガタ揺らしながらギシギシ音を立て、後ろ向きで抜き差しされる行為は終わらない。

私のことなど完全に無視して物のように扱われて、好き勝手にペニスを挿入され凌辱される。

私はそんな、猟奇的なセックスで感じる女だった。

いくら否定したくても、怒涛のように襲う快楽を前に、私は凌辱されて悦ぶ女、という事実を受け入れるほかない。

6-2.逆らえない快楽

官能的な表情

──バチッ、バチッ……
男の大きな亀頭で膣内の奥深くをえぐられながら、再び臀部に平手打ちが飛ぶ。
今までの彼氏はもちろん、実の親にだって叩かれたことは一度もない。

それなのに、ギロチンセックスで快楽を得てしまった身体を罰せられるように打たれる痛みに、下半身が燃え上がる。
何をされるかわからない不安が快楽のエネルギーとなり、壊れた噴水のように身体中から体液が湧き出て止まらない。

ヌリュンッ、ヌリュンッ……

ヌメヌメの蜜液を絡ませながら、硬い肉棒が膨れた膣壁をかき分け、何度も出入りする。
絶対的な力を持つ雄のペニスを前に、私はなすすべもない。

優しい恋人たちを相手に、砂漠のように濡れなかった以前の自分の身体が信じられない。

──バシンッ!

「ひうーーッッ……!!」

巨大な亀頭が奥を穿った瞬間、尻臀の右側の肉の膨らみを打つ衝撃が同時に走り、私はギロチンから出した頭をがくりとうなだれた。
背中から腰のあたりまでが、痛みと快楽の余韻にひくひく震えている。

そんな状態になっている私にはかまわず、ペニスを抜き差しする動きは続く。

「りんごちゃんの乳首とクリ、こんなに膨らんでるよ」

竜太郎が胸とアソコの敏感部をつまむと、痛みと甘い快楽が同時に襲う。

ピストン運動にゆさゆさ揺れる乳房を好き勝手に揉みながら彼が言う。

「おっぱい、ちょうどいいサイズだよね。Cカップくらい? まあそんなことはどうでもよくて、乳首もかなりいやらしいよね、りんごちゃんって。セックスする前より、明らかに色が濃くなってずっと勃起したままだよ。クリも思い切り外に飛び出ちゃってる」

「はうっっ、はあぁああんっ……」

恥辱的なセリフを浴びせる竜太郎に私は反論できないどころか、淫らに変化した自分の性器を実況中継され、恥ずかしいのに、はしたない存在に成り下がった自分により興奮してしまっていた。

淫らな生き物に成り下がった自分は、この薄暗いSMルームのギロチン台の上で、どこまでも堕ちぶれていくしかないのだ。

そんな思いに駆られながら、私はあえぎ声と涎を垂らし続ける。

『大丈夫? つらくない?』

といった私を気遣う声かけや体勢の変更は一切なく、上半身を拘束した無理のある姿勢で後ろからズブンズブンと貫き続けられる。

「あんんんううーーッッ!!」

ズグンッッ──!!

突然、ひときわ強くペニスが奥を穿ったとき。

私の頭に火花が散り、ビクンビクンと膣奥で震える肉棒を呆然と感じていた。

こんなに、ドロドロになるほど濡れて、胎内でペニスが射精を迎えると、何も考えられないほど気持ちいいんだ。
そんなこと、濡れなかった今までは知らなかった──。

6-3.次のステージへ

新しいSMの世界へ

ヌルリ、とペニスが抜かれると、私はギロチン台から解放され、その場に倒れ込んだ。

「はい、どうぞ」

柔らかいベッドに横になった私に、竜太郎が水を渡す。
プレイ以外のときは、普通に優しい男性なのだ。

私はまだ火照りの残る汗ばんだ手で水を受け取る。

「ありがとう」

「大丈夫だった? りんごさん、けっこう乱れてたけど、ほんとにSMルームとか初めてだったの?」

「初めてです。本当に」

今まで、セックスはベッドの上でするものとしか思っていなかった。

それが、今夜はふかふかのベッドの上でもない、ギロチン台で後ろから凌辱されるようにセックスし、最後は私の同意も得ず男が勝手に果てて終わった。

そんな、猟奇的な性交で、私はメスの愛液を垂れ流し、狂うようによがってしまった。

私はそういう女だったという事実を今日、身を持って知った。

25年間生きてきて、私は自分という女のことを何ひとつわかっていなかったのだ。

自分でも知らない顔が、私にはまだたくさんあるのではないか。

秘められている自身を知る方法の1つが、SMなのだろうか。

それは、平凡なOLである私の想像を超えた事実だった。
思いも寄らないきっかけで、知らなかった自分に目覚める。

ずっと悩んでいたコンプレックスが解消する。
人生にはそんなことも起こるのだ。

女の正体は底知れない。
自分の本当の欲望や隠されている姿などつゆ知らず、私はどこもおかしくない普通の女、と思い込んでいる女が、もしかしたら他にもいるのかもしれない。

何かのきっかけがなければ知ることのできない姿を隠し持った女が、この世界には他にどれだけいるのだろう。
これからは、SMプレイを理解している男性を探そうか。

帰り道を歩きながら、私はそう考えていた。
テクニックも気遣いもある竜太郎は良い男性だ。

だが、相手が竜太郎だからあそこまで乱れたとまでは思えない。
私は、話の中で聞いた、竜太郎が以前使っていたというSM専用マッチングサイトを開き、登録ボタンを押した。

翌週。

お昼どきでざわつく✕✕会社の社員食堂で、今日も私は同僚の鈴木さん、川村さんとランチを食べている。

いつもテンション高めの川村さんが、目を輝かせながら鈴木さんに問う。

「鈴木さん、彼との週末の温泉旅行、どうだったか聞かせてよ~」

「えーっとぉ、一晩中……♡ってわけにはいかなかったけど、初めてのお泊りだったから、たっぷり♡って感じだったよ」

「うそーっ羨ましい~! 私も彼氏できたら温泉旅行行きたいなー。土曜に婚活パーティーで会った外資系の人、けっこういい感じだったんだよね」

「いいじゃん! 最初のデートうまくいくといいね。椎名さんは週末何してたの? 例の、気になってる人とは会ってる?」

「うーんと、また別の人を探し中かな」

「そうなんだ。そういえば、椎名さんってどんな人がタイプなんだっけ?」

川村さんが、今度は私に向かって目を輝かせながら聞く。

「私は……ごく普通の、優しい人がいいな」

私はこれまで通り、自分の恋愛沙汰については本音を隠し、嘘の答えを話し続けるだろう。
だが、以前のような虚しさはなくなっていた。

代わりに、まだ経験していないこと、これからしてみたいことを考えると、真っ昼間の社内にいながらも、SMルームで感じた背徳的なあの快楽の感覚が蘇るのだった。

<了>

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